和歌と俳句

梅 白梅

1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11

後撰集 素性法師
梅の花をればこぼれぬわが袖に匂ひ香うつせ家づとにせん

後撰集 貫之
ふる雪はかつもけななむ梅の花ちるにまどはず折りてかざさん

拾遺集 躬恒
ふる雪に色はまがひぬ梅の花かにこそにたる物なかりけれ

拾遺集 兼盛
わがやどの梅のたち枝や見えつらん思ひの外に君がきませる

拾遺集 躬恒
かをとめて誰をらざらん梅の花あやなし霞たちなかくしそ

拾遺集 貫之
白妙のいもが衣に梅の花色をも香をもわきぞかねつる

拾遺集 貫之
梅の花まだ散らねども行く水の底にうつれるかげぞ見えける

拾遺集 よみ人しらず
梅の花よそながら見むわぎもこがとかむばかりの香にもこそしめ

拾遺集 躬恒
吹く風をなにいとひけん梅の花ちりくる時ぞ香はまさりける

拾遺集 能宣
匂をば風にそふとも梅の花色さへあやなあだに散らすな

拾遺集 中務卿具平親王
あかざりし君がにほひの恋しさにに梅の花をぞ今朝は折りつる

拾遺集 贈太政大臣道真
東風ふかばにほひおこせよ梅の花あるじなしとて春をわするな

拾遺集 安倍広庭
いにし年ねこしてうゑしわがやどのわか木の梅は花さきにけり

拾遺集 源寛信朝臣
折りて見るかひもあるかな梅の花けふここのへのにほひまさりて

拾遺集 参議伊衡
かざしては白髪にまがふ梅の花今はいづれをぬかむとすらん

拾遺集 貫之
數ふれどおぼつかなきをわがやどの梅こそ春の數をしるらめ

後拾遺集 弁乳母
かばかりのにほひなりとも梅の花しづの垣根を思ひわするな

後拾遺集 大江嘉言
わがやどにうゑぬばかりぞ梅の花あるじなりともかばかりぞみむ

後拾遺集 清基法師
風ふけばをちの垣根の梅の花かはわがやどの物にぞありける

後拾遺集 藤原経衡
たづねくる人にもみせむ梅の花ちるとも水にながれざらなむ

後拾遺集 平経章朝臣
すゑむすぶ人のてさへや匂ふらむ梅のした行く水のながれは

紫式部
埋れ木の下にやつるる梅の花香をだに散らせ雲の上まで

和泉式部
みるほども散らば散らなん梅の花しづごころなく思ひをこせじ

詞花集 源時綱
吹きくれば香をなつかしみ梅の花ちらさぬほどの春風もがな

詞花集 右兵衛督公行
梅の花にほひを道のしるべにてあるじもしらぬ宿にきにけり