しら麻の とばりほのぼの 社見ゆ 川の隈はふ 秋霧のうへ
踏むところ 砂阪にして 松はみな 黒きかげおく 有明月夜
はかなごと 七つばかりも 重なれば はなれがたかり 朝の小床も
いざなみの 裔にうまれし 少女子と 黄泉国にて かたきとなりぬ
かかはりも なき話より ふと君に 七日いだかれ いねぬを思ふ
天人の 五衰と云ふは 宵に寝て ねたらぬさまの 目もかぞふるや
踏む土に おき合せたる 恋人と はなはだかろく われ思はなくに
黄楊の花 矮人の国の 大木の 白き月夜に 蚊のうなるかも
少女の日 四人の母と なりし日も ものの際なし おん心より
ことわれに 及ぶとかねて 知りしごと さそひたまはる 火の中に行く
わがやつれ 見むとくるなる 御車の さきおひどもは 草刈りにきぬ
わが眉根 つくる日をなみ 歎きすと 云ひける人を 今日は見に行く
朝顔の 枯葉をひけば 山茶花の つぼみぞ見ゆる 秋のくれがた
秋の雨 君をまつかな 柱にも 壁にも去年の 歌を染めつつ
今宵のみ 一人寝るなり かく思ひ おもひ上りて ありてさびしき
少女子の うばふにたらぬ ほこりさへ 君とりすてつ かく思ふわれ
かつてわが 恋ひし心と 思はれし 昔の恋の 身をつなぐわぶ
二十三 一人し住めば けものには 似じとたのめる けうとき妹
はしぎやし 吾妹とてしも なでられむ ただちに生ふる しら髪と知る
夏まつり 山車のけんくわに 袖ふるを 侠とおもはず 結綿の人