和歌と俳句

雁 かりがね

水軍に焼かるる城や雁の秋 蛇笏

雁鳴くや秋ただなかの読書の灯 蛇笏

白秋
夕焼小焼 大風車の 上をゆく 雁が一列 鴉が三羽

白秋
後の雁が 先になりたり あなあはれ 赤い円日 岬にかかり

廃れ行く港の檐や雨の雁 石鼎

磯ばたに日こぼす雨や雁の声 石鼎

白秋
足の泥 落すひまなみ 藁草履 手にもちて仰ぐ 暁の雁金

首のべて日を見る雁や蘆の中 石鼎

一痕の月に一羽の雁落ちぬ 龍之介

芒刈つて片岡広し雁渡る 龍之介

唐黍の先に夕日や雁渡る 龍之介

浅草の雨夜明りや雁の棹 龍之介

雁啼くや草黄ばみたる土饅頭 龍之介

戸の口にすりつぱ赤し雁の秋 石鼎

夕沼に雁や落ちたる水けぶり 秋櫻子

雁鳴いてさみしくなりぬ隠れんぼ 悌二郎

雁鳴いてひしひし夜の心かな 草城

かりがねや閨の灯を消す静心 草城

かりがねや重たうなりし膝枕 草城

かりがねや眠り弛みに妻の脣 草城

雁聴くや更けし灯を守りゐて 草城

玄界の涛のくらさや雁叫ぶ 久女

凹みたる藁屋の上の雁の空 青畝

かりがねや一人按摩のひとりもの 草城

初雁や銀短冊の五六枚 喜舟

雁来るや黒縮緬の染上り 喜舟

雁鳴くや香取鹿島の二柱 喜舟

子規庵の笠蓑ゆれぬ雁渡し かな女

初雁の一棹かかる日空かな 月二郎

雁渡る菓子と煙草を買ひに出て 草田男