此屋のかなしさ告げよ野老堀
盃に泥な落しそむら燕
物の名を先とふ蘆のわか葉哉
いも植て門は葎のわか葉哉
のうれんの奥物ぶかし北の梅
神垣やおもひもかけず涅槃像
御子良子の一もと床し梅の花
何の木の花とはしらず匂哉
はだかにはまだ衣更着のあらし哉
初桜折しもけふは能日なり
丈六にかげろふ高し石の上
香ににほへうにほる岡の梅のはな
さまざまの事おもひ出す櫻かな
花をやどにはじめをはりやはつかほど
このほどを花に礼いふわかれ哉
よし野にて櫻見せふぞ檜の木笠
雲雀より空にやすらふ峠哉
竜門の花や上戸の土産にせん
酒のみに語らんかかる滝の花
はなのかげうたひに似たるたび寝哉
ほろほろと山吹ちるか滝の音
桜がりきどくや日々に五里六里
日は花に暮てさびしやあすならふ
扇にて酒くむかげやちる櫻