和歌と俳句

陽炎

陽炎の中に二間の我が庵 虚子

かげろふの中に来りて遊びけり 誓子

かげろふを見て風邪の身をなぐさまず 誓子

陽炎が鉄路の果を見せしめず 誓子

川原寺あはれ陽炎ひて野に低き 秋櫻子

濱砂を盗むかげろふはげしとき 誓子

陽炎や声誉と成就まぎれがち 草田男

かげろふ濱愛することを隠すなし 誓子

磯浜にたつ陽炎は独り見ぬ 鷹女

倉壁高しかげろふ届かずあららかに 草田男

陽炎ひてもう痩せられぬ犬の肋 楸邨

かげろうふと字にかくやうにかげろへる 風生

陽炎や炎ゆると云へど野の果に 鷹女

産みし乳産まざる乳海女かげろふ 多佳子

海女あがり来るかげろふがとびつけり 多佳子

かげろふを海女の太脚ふみしづめ 多佳子

かげろふやおさへきりたる憤り 万太郎

老残の藁塚いそぐ陽炎よ 三鬼

一丈のかげろう塩田に働きて 多佳子

ゆくところかげろふ立てる袖光る 林火

かげろうに消防車解体中も赤 三鬼

老牛に道ゆづられ陽炎へり 鷹女

陽炎や我に無き人我をでる 耕衣

いとけなき陽炎のぼる象の尻 楸邨

かげろひて通る信濃のわらべ唄 双魚