和歌と俳句

齋藤茂吉

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シシリーの エトナの山は あまつ日に かがよふまでに 雪ふりにけり

伊太利亜の Reggioの町を 見つつ過ぐ しらじらとせる 川原もありて

Messinaの 海峡わたり 冬枯の さびたる山が 目にに入り来も

孤独なる ストロンボリーの いただきに 煙たつ見ゆ 親しくもあるか

Barkといふ 三檣船も 見えそめて コルシカ島に 近づきゆかむ

朝さむき マルセーユにて 白き霜 錻力のうへに 見えつつあはれ

山のうへの み寺に来り 見さくるや 勝鬨あぐる 時にし似たり

霧くらく 罩めて晴れざる 巴里にて 豊なるものを 日々に求めき

ルウヴルの 中にはひりて 魂も いたきばかりに 去りあへぬかも

英雄は その光をも 永久にして 放たむものぞ 疑ふなゆめ

美術館に 入りて佇む 時にのみ おのれ一人の 心となりつ

おどおどと 伯林の中に 居りし日の 安らぎて維也納に 旅立たむとす