雨の天たしかに雲雀啼いてゐる 多佳子
茂吉
啼きのぼる 雲雀のこゑは 浄けかり 地平はいまだ 雪のしろきに
初ひばり農地は昼もうるほひて 蛇笏
日の御座ひばり鳴くねをちぢむなり 蛇笏
くもることわすれし空のひばりかな 万太郎
うつむきてゆきもどる日々雲雀鳴く 信子
雲雀鳴く夕空仰ぐこともなし 信子
雲雀野や牛馬を視るも手かざして 鷹女
雨の雲雀次ぎ次ぎわれを受渡す 三鬼
祝福を雨の雲雀に返上す 三鬼
処女のみのミサに雲雀の上下音 静塔
ひばり野の起伏の果の円い空 立子
足垂るる電工に雲雀声注ぐ 三鬼
雲黒し土くれつかみ鳴く雲雀 三鬼
見えぬ雲雀光る精魂まきちらす 三鬼
初雲雀空もこころも曇る日の 草城
妻の留守ながしと思ふ夕ひばり 草城
雲雀みる右手に左手に小手をかへ 爽雨
大工の帰路を農女見送り夕雲雀 草田男
初雲雀けふ歩き居る開拓者 草田男
己を突如見つけし声に揚雲雀 草田男
揚雲雀ひとに追風迎へ風< 草田男
声のみの雲雀の天へ光る沼 三鬼
迅きままに一ひるがへり雲雀落つ 爽雨
雲雀野に宮址発掘みだれ見ゆ 爽雨
両端の青む土橋よ揚雲雀 林火