暁台
春日野の片端麦を蒔そめぬ
一茶
春日野は駄菓子に交る鹿の屎
漱石
春日野は牛の糞まで焼てけり
子規
春日野の山のやどりの窓近く鹿の鳴く夜は妹をしぞ思ふ
子規
春日野の神のともし火影見えてをちこちに鳴くさを鹿の聲
節
春日野の茅原を暑み森深くこもりにけらし鹿のみえこぬ
八一
かすが野に押してるつきのほがらかにあきのゆふべとなりにけるかも
八一
かすがののみくさ折りしきふすしかのつのさへさやにてるつくよかも
八一
かすが野にふれるしらゆきあすのごとけぬべくわれはいにしへおもほゆ
牧水
葉を喰めば 馬も酔ふとふ 春日野の 馬酔木が原の 春過ぎにけり
牧水
春日野に 生ふる蕨は ひと摘まで 鹿の子どもの 喰みつつぞ居る
利玄
薄雪に春日はかくれ杉が枝に色こまやかなる藤のむらさき
利玄
老杉にかかる藤浪百花の匂ひににほへり風なき春日
八一
かすがののしかふすくさのかたよりにわがこふらくはとほつよのひと
八一
かすがののよをさむみかもさをしかのまちのちまたをなきわたりゆく
八一
をとめらはかかるさびしきあきののをゑみかたまけてものがたりゆく
八一
をとめらがものがたりゆくののはてにみるによろしきてらのしろかべ
秋櫻子
春日野の藤を華鬘となしたまふ
八一
かすがののをばなかたまけおくつゆのおもきこころをわがいかにせむ
八一
うつしみはいづくのはてにくさむさむかすがののべをおもひでにして
八一
かすがののこぬれのもみぢもえいでよまたかへらじとひとのゆくひを