和歌と俳句

唐招提寺

竹伐り置く唐招提寺門前に 三鬼

蛇いでてすぐに女人に会ひにけり 多佳子

蛇を見し眼もて弥勒を拝しけり 多佳子

吾去ればみ仏の前蛇遊ぶ 多佳子

夏雲の立ちたつ伽藍童女うた 多佳子

童女うた伽藍片陰しそめけり 多佳子

一燈なく唐招提寺明に 多佳子

野の猫が月の伽藍をぬけとほる 多佳子

月天へ塔は裳階をかさねゆく 多佳子

月光に朱うばはれず柱立つ 多佳子

唐様の大寺にして曼珠沙華 上村占魚

大曼珠沙華唐招提寺境内に 上村占魚

伽藍の屋根大日わたる恋雀 多佳子

恋雀頭に円光をひとつづつ 多佳子

永き日を千の手載せる握る垂らす 誓子

月の夜に開扉三処の三体仏 誓子

指さきにざらざらの香月に燻ぶ 誓子

奈良の山出て寺の上に来る 誓子

白砂眩し盲鑑真は奥の奥に 三鬼

今日の月待つなる鴟尾に雲ふかし 秋櫻子

対の供華おのおの芒秀でけり 秋櫻子

厨子をがむ一念月も雲をいづ 秋櫻子

月幾世照らせし鴟尾に今日の月 秋櫻子

灯の尽きし紙燭をかこみ虫時雨 秋櫻子