和歌と俳句

霜柱

霜柱ことに生簀のほとりかな 万太郎

とりわけて赤土みちのしもばしら 万太郎

霜柱しらさぎ空に群るゝなり 万太郎

霜柱この土をわが墳墓とす 楸邨

踏めば鳴る落葉の下の霜柱 楸邨

星の位置たしかめあふぐ霜柱 楸邨

犬の影犬に添ひゆく霜柱 楸邨

水音のやうやく高し霜柱 楸邨

霜柱赤松の根が貫きぬ 楸邨

霜柱子のいらだつは何に因る 楸邨

霜柱倒るる光明滅し たかし

霜柱次第に倒れいそぐなり たかし

霜の塔荘厳なりし倒れ消ゆ たかし

霜の塔日日玲瓏と生滅し たかし

つる枯るる埴崕くづれ霜柱 蛇笏

霜柱墓標の白木くもらせぬ 林火

焼かれ追はれきて霜柱うつくしき 楸邨

霜柱牝鶏絶えず眸をうごかし 信子

くづれては瀬をさやかにもしもはしら 蛇笏

峠路の句碑をうづむる霜柱 蛇笏

撃たれたる雀か麦の霜柱 秋櫻子

霜柱掌に日りんが小さくなる 蛇笏

残る阿呆霜柱みな消え失せて 耕衣

霜柱踏み砕き身の丈つまる 鷹女

遠き死や土を掴みし霜柱 楸邨

磔像と数千万の霜柱 青畝

石に彫る帰天の月日霜柱 青畝