和歌と俳句

拾遺和歌集

哀傷

よみ人しらず
世の中をかくいひいひのはてはてはいかにやいかにならむとすらん

人麿
さざなみのしがのてこらがまかりにし河せの道を見ればかなしも

人麿
おきつ浪よるあらいそをしきたへの枕とまきてなれる君かも

貫之
あすしらぬわが身とおもへど暮れぬ間の今日は人こそかなしかりけれ

貫之
夢とこそいふべかりけれ世の中はうつつある物と思ひけるかな

人麿
家にいきてわがやを見ればたまざさのほかにおきける妹がこまくら

人麿
まきもくの山へひびきてゆく水のみなわのことによをばわが見る

人麿
いも山のいはねにおける我をかも知らずて妹がまちつつあらん

貫之
手に結ぶ水にやどれる月影のあるかなきかの世にこそありけれ

朱雀院御製
くれ竹のわが世はことになりぬともねはたえせずもなかるべきかな

よみ人しらず
とりべ山たににけぶりのもえたたばはかなく見えし我としらなん

すけきよ
みな人の命を露にたとふるは草むらごとにおけばなりけり


草枕人はたれとかいひおきしつひのすみかはの山とぞ見る

沙弥満誓
世の中をなににたとへむあさぼらけこぎゆく舟のあとのしら浪

源相方朝臣
契あればかはねなれどもあひぬるを我をばたれかとはんとすらん

よみ人しらず
山寺の入相の鐘のこゑごとに今日も暮れぬと聞くぞ悲しき

慶滋保胤
うき世をばそむかば今日もそむきなん明日もありとはたのむべき身か

よみ人しらず
世の中に牛の車のなかりせば思ひの家をいかでいでまし

藤原高光
世の中にふるそはかなき白雪のかつはきえぬる物としるしる