としのぶの母
人なししむねのちふさをほむらにて焼く墨染の衣きよ君
大江為基
藤衣あひ見るべしと思ひせばまつにかかりてなぐさめてまし
大江為基
年ふれどいかなる人かとこふりてあひ思ふ人にわかれざるらん
よみ人しらず
墨染の衣の袖は雲なれや涙の雨のたえずふるらん
よみ人しらず
あまといへどいかなるあまの身なればか世ににぬしほをたれわたるらん
藤原為頼
世の中にあらましかばと思ふ人なきがおほくもなりにけるかな
返し 右衛門督公任
常ならぬ世はうき身こそかなしけれその數にだにいらじとおもへば
伊勢
なき人もあるがつらきを思ふにも色わかれぬは涙なりけり
よみ人しらず
うつくしと思ひしいもを夢に見ておきてさぐるになきぞ悲しき
清原元輔
思ひやる子恋の森の雫にはよそなる人の袖も濡れけり
平兼盛
なよ竹のわがこの世をば知らずしておほしたてつと思ひけるかな
藤原共政朝臣妻
我のみやこの世はうきとおもへども君もなげくと聞くぞ悲しき
返し 大納言朝光
うき世にはある身もうしと歎きつつ涙のみこそふるここちすれ
平定文
思ふよりいふはおろかになりぬればたとへていはん言の葉ぞなき
貫之
こふるまに年のくれなば亡き人の別やいとど遠くなりなん
よみ人しらず
いかにせん忍の草もつみわびぬかたみと見えしこだになければ
よみ人しらず
春は花秋は紅葉とちりはててたちかくるべき木のもともなし
中務
わすられてしばしまどろむほどもがないつかは君を夢ならで見ん
中務
うきながら消えせぬ物は身なりけりうらやましきは水のあわかな