後撰集・雑歌
抜き留めぬ髪の筋もてあやしくもへにける年の数を知るかな
後撰集・雑歌
身は早くなきもののごと成にしを消えせぬ物は心なりけり
後撰集・雑歌
いせ渡る河は袖より流るれどとふにとはれぬ身はうきぬめり
後撰集・雑歌
塵に立我が名清めんももしきの人の心を枕とも哉
後撰集・雑歌
逢ひに逢ひて物思頃の我が袖は宿る月さへ濡るる顔なる
後撰集・雑歌
心なき身は草木にもあらなくに秋来る風に疑はるらん
後撰集・雑歌
身のうきを知ればはしたになりぬべみ思ひは胸のこがれのみする
後撰集・雑歌
見えもせぬ深き心を語りては人に勝ちぬと思ふものかは
後撰集・雑歌
伊勢の海に年へて住みしあまなれどかかるみるめはかづかざりしを
後撰集・雑歌
人心嵐の風の寒ければこのめも見えず枝ぞしほるる
後撰集・雑歌
山河の音にのみ聞くももしきを身をはやながら見るよしも哉
後撰集・雑歌
世の中はいさともいさや風の音は秋に秋そふ心地こそすれ
後撰集・離別羇旅
別ては何時逢ひ見むと思らん限ある世の命ともなし
後撰集・離別羇旅
別るれどあひも惜しまぬももしきを見ざらん事やなにかかなしき
後撰集・離別羇旅
待ちわびて恋しくならば尋ぬべくあとなき水の上ならでゆけ
後撰集・離別羇旅
さらばよと別し時に言はませば我も涙におぼほれなまし
後撰集・離別羇旅
目に見えぬ風に心をたぐへつつやらば霞の別こそせめ
後撰集・離別羇旅
君が世はつるの郡にあえてきね定なき世の疑ひもなく