よみ人しらず
ゆく人をとどめかたみのから衣たつより袖の露けかるらん
御めのと少納言
をしむともかたしやわかれ心なる涙をだにもえやはとどむる
女蔵人参河
東路の草葉をわけん人よりもおくるる袖ぞまつは露けき
よみ人しらず
わかるればまつ涙こそさきにたていかでおくるる袖のぬるらん
よみ人しらず
わかるるををしとぞ思ふつるきはの身をよりくだく心ちのみして
三条太皇太后宮
旅人の露はらふべき唐衣またきも袖のぬれにけるかな
貫之
あまたにはぬひかさねねど唐衣思ふ心はちへにぞありける
貫之
とほくゆく人のためにはわが袖の涙の玉もをしからなくに
よみ人しらず
惜むとてとまる事こそかたからめわが衣手をほしてだにゆけ
貫之
糸による物ならなくにわかれぢは心ほそくもおもほゆるかな
戒秀法師
かめ山にいくくすりのみ有りければとどむる方もなき別かな
藤原清正
思ふ人ある方へゆくわかれぢを惜む心ぞかつはわりなき
元輔
いかばかり思ふらむとか思ふらんおいてわかるるとほきわかれを
源満中朝臣
君はよし行末とほしとまる身のまつほどいかがあらむとすらん
よみ人しらず
おくれゐてわがこひをれば白雲のたなひく山をけふやこゆらん
右衛門
命をぞいかならむとは思ひこし生きてわかるる世にこそ有りけれ
橘倚平
昔見しいきの松原事とはば忘れぬ人も有りとこたへよ
藤原為順
武隈の松を見つつやなぐさめん君がちとせの影にならひて
兼盛
たよりあらばいかでみやこへつけやらむけふ白河の関はこえぬと
右衛門督公任
東路のこのした暗くなりゆかばみやこの月をこひざらめやは