よみ人しらず
春霞たつあか月を見るからに心ぞそらになりぬべらなる
よみ人しらず
さくら花つゆにぬれたるかほみればなきて別れし人ぞこひしき
よみ人しらず
ちる花は道見えぬまでうづまなん別るる人もたちやとまると
好忠
雁がねの帰るをきけば別れ路は雲井はるかに思ふばかりぞ
村上院 御製
夏衣たちわかるべきこよひこそひとへにをしき思ひそひぬれ
よみ人しらず
わするなよわかれぢにおふるくすのはの秋風ふかば今帰りこむ
よみ人しらず
別てふ事は誰かは始めけんくるしき物としらずやありけん
よみ人しらず
時しもあれ秋しも人のわかるればいとど袂ぞつゆけかりける
村上院 御製
君が世を長月とだにおもはずばいかに別のかなしからまし
壬生忠見
露にだにあてじと思ひし人しもぞ時雨ふるころ旅にゆきける
能宣
わかれぢを隔つる雲のためにこそ扇の風をやらまほしけれ
よみ人しらず
別れてはあはむあはじぞさだめなきこの夕暮れや限なるらん
よみ人しらず
わかれぢはこひしき人のふみなれややらでのみこそ見まくほしけれ
貫之
別れゆくけふはまどひぬあふさかは帰りこむ日のなにこそ有りけれ
能宣
ゆくすゑのいのちもしらぬわかれぢはけふ相坂や限りなるらん
赤染衛門
惜むともなきものゆゑにしかすがの渡ときけばただならぬかな
源のよしたねの妻
もろともにゆかぬ三河の八橋はこひしとのみや思ひわたらん
順
わかれぢはわたせる橋もなきものをいかでかつねにこひ渡るへき
村上院 天暦御製
わかるれば心をのみぞつくしくしさしてあふべきほどをしらねば