壬生忠見
こひすてふわが名はまたき立ちにけり人しれずこそ思ひそめしか
兼盛
しのぶれど色にいでにけりわが恋は物や思ふと人のとふまで
貫之
色ならばうつるばかりも染めてまし思ふ心をしる人のなさ
平公誠
しのぶるも誰ゆゑならぬ物なれば今は何かは君にへだてむ
よみ人しらず
なげきあまりつひに色にぞいでぬべきいはぬを人のしらばこそあらめ
よみ人しらず
あふことを松にて年のへぬるかな身は住の江におひぬものゆゑ
よみ人しらず
おとにきく人に心をつくばねのみねとこひしき君にもあるかな
人麿
あまぐものやへ雲かくれなる神のおとにのみやはきき渡るべき
よみ人しらず
見ぬ人のこひしきやなぞおぼつかな誰とかしらむ夢に見ゆとも
よみ人しらず
夢よりぞ恋しき人を見そめつる今はあはする人もあらなん
よみ人しらず
かくてのみありその浦の浜千鳥よそになきつつこひやわたらむ
よみ人しらず
よそにのみ見てやはこひむ紅のすゑつむ花のいろにいでずば
権中納言敦忠
身にしみて思ふ心の年ふればつひに色にもいでぬべきかな
くにまさ
いかでかは知らせそむべき人しれず思ふ心のいろにいでずば
権中納言敦忠
いかでかはかく思ふてふ事をだに人づてならで君にしらせむ
小野宮太政大臣実頼
あなこひしはつかに人をみつのあわの消えかへるとも知らせてしがな
返し 堤中納言の御息所
ながからじと思ふ心は水のあわによそふる人のたのまれぬかな
よみ人しらず
みなといづるあまのを舟のいかりなはくるしき物とこひをしりぬる
よみ人しらず
大井河くだすいかだのみなれさを見なれぬ人もこひしかりけり
人麿
みなそこにおふるたまものうちなびき心をよせてこふるこのごろ