和歌と俳句

拾遺和歌集

恋二

よみ人しらず
ひとりねし時は待たれし鳥のねも稀に逢ふ夜はわびしかりけり

よみ人しらず
葛木や我やは久米のはしつくり明けゆく程は物をこそおもへ

平行時
あさまだき露わけきつる衣手のひるまはかりに恋ひしきやなぞ

大納言源きよかげ
ふたつなき心は君におきつるを又ほどもなく恋ひしきやなぞ

よみ人しらず
いつしかと暮れを待つ間の大空は曇るさへこそ嬉しかりけれ

大江為基
日のうちに物をふたたび思ふかな疾く明けぬると遅く暮るると

貫之
もも羽かき羽かく鴫も我がごとく朝わびしき數はまさらじ

よみ人しらず
うつつにも夢にも人に夜し逢へば暮れ行くばかり嬉しきはなし

よみ人しらず
暁の別れの道を思はずば暮れ行く空は嬉しからまし

よみ人しらず
君こふる涙のこほる冬の夜は心とけたるいやはねらるる

在原業平朝臣
かからでもありにしものを白雪のひとひもふればまさる我が恋

能宣
あさこほり解くる間もなき君によりなどてぞほつる袂なるらん

よみ人しらず
身をつめば露をあはれと思ふかな暁ごとにいかで置くらん

よみ人しらず
憂しと思ふものから人の恋ひしきはいづこをしのぶ心なるらん

よみ人しらず
よそにても有りにしものを花すすきほのかに見てぞ人は恋しき

よみ人しらず
夢よりもはかなきものはかげろふのほのかに見えしかげにぞありける

壬生忠見
夢のごとなどか夜しも君を見む暮るる待つ間も定めなきよを


恋ひしきを何につけてか慰めむ夢だに見えず寝る夜なければ


明け暮れの空にぞ我は迷ひぬる思ふ心のゆかぬまにまに

貫之
たまほこの遠ほ道もこそ人はゆけなど時のまも見ぬは恋ひしき