和歌と俳句

在原業平

古今集・恋
かずかずに思ひ思はずとひかたみ身をしる雨は降りぞまされる

古今集・雑歌
年をへて住みみこし里を出でていなばいとど深草のとやなりなむ

後撰集・雑歌
大堰川うかべる舟のかがり火にをぐらの山も名のみなりけり

古今集・雑歌
今ぞしる苦しきものと人またむ里をはかれすとふべかりけり

伊勢物語・九新古今集・雑歌
時しらぬ山は富士の嶺いつとてか鹿の子まだらに雪のふるらむ

雁なきて菊のはなさく秋はあれど春の海辺に住吉の浜

おもへども身をしわけねばめかれする雪のつもるぞ我がこころなる

てををりて経にける年を數ふれば十といひつつ四つはへにけり

年だにもとをとてよそは経にけるをいくたび君をたのみきつらむ

そむくとて雲にはのらぬものなれど世の憂きことぞよそになるてふ

新古今集・雑歌
はるる夜の星か川辺の蛍かも我がすむかたにあまの焚く火か

後撰集・雑歌
たのまれぬうき世中を歎きつつ日かげにおふる身をいかにせん

いとひては誰かわかれのかたからむありしにまさるけふは悲しも

出でてこしあとだにいまは変はらぬに誰がかよひぢと今はなるらむ

いままでに忘れぬひとは世にもあらじおのがさまざま年のへぬれば

伊勢物語・一
春日野の若紫のすり衣しのぶのみだれかぎりしられず

住みわびぬ今はかぎりと山里につまきこるべきやどもとめてむ

後撰集・雑歌
難波津をけふこそみつの浦ごとにこれやこの世をうみわたる舟

伊勢物語・九古今集・羇旅歌
唐衣きつつなれにしつましあればはるばるきぬる旅をしぞ思ふ

伊勢物語・九古今集・羇旅歌
名にしおはばいざ言とはむ都鳥わが思ふ人は有りやなしやと

古今集・哀傷歌
つひにゆく道とはかねてききしかど昨日今日とは思はざりしを