和歌と俳句

拾遺和歌集

物名

ねりかき すけみ
いにしへはおこれりしかとわびぬればとねりがきぬも今はきつべし

をはりこめ すけみ
池をはりこめたる水のおほかればいひのくちよりあまるなるべし

まつたけ すけみ
あしひきの山した水にぬれにけりその火まつたけ衣あふらん

まつたけ すけみ
いとへどもつらきかたみを見る時はまつたけからぬねこそなかるれ

くくたち すけみ
山たかみ花の色をも見るべきににくくたちぬる春かすみかな

こにやく すけみ
野を見れば春めきにけりあをつづらこにやくまましわかなつむべく

そやしまめ 高岳相如
いさりせしあまのをしへしいづくぞやしまめぐるとてありといひしは

きしのをとり すけみ
河きしのをとりおるべき所あらばうきにしにせぬ身はなげてまし

山からめ すけみ
もみぢ葉に衣の色はしみにけり秋のやまからめぐりこしまに

かやくき すけみ
なにとかやくきのすがたはおもほえであやしく花の名こそわするれ

つくみ 大伴黒主
わが心あやしくあだに春くれば花につく身となでてなりけん

つくみ 大伴黒主
さく花に思ひつくみのあぢきなさ身にいたつきのいるもしらずて

つはくらめ すけみ
なにはつはくらめにのみぞ舟はつく朝の風のさだめなければ

はらか 元輔
みよしのもわかなつむらんわぎもこがひはらかすみて日かずへぬれば

さけからみ すけみ
あしきぬはさけからみてぞ人はきるひろやたらぬと思ふなるべし

火ほしのあゆ すけみ
雲まよひほしのあゆくと見えつるは蛍のそらにとぶにぞありける

おしあゆ すけみ
はしたかのをきゑにせんとかまへたるおしあゆかすな鼠とるべく

つつみやき すけみ
わぎもこが身をすてしより猿沢の池のつつみやきみはこひしき

うるかいり 重之
この家はうるかいりても見てしがなあるじながらもかはんとぞ思ふ

したたみ よみ人しらず
あづまにてやしなはれたる人のこはしたたみてこそ物はいひけれ