藤原清忠がむすめ
ながめやる山邊はいとど霞みつつおぼつかなさのまさる春かな
人麿
我が背子をきませの山と人はいへど君もきまさぬ山の名ならし
赤人
我か背子をならしの岡のよぶこどり君よびかへせ夜のふけぬ時
よみ人しらず
こぬ人をまつちの山の郭公おなじ心にねこそなかるれ
よみ人しらず
しののめに鳴きこそわたれ時鳥物思ふ宿はしるくやあるらん
よみ人しらず
たたくとて宿のつま戸を開けたれば人もこずゑの水鶏なりけり
よみ人しらず
夏衣うすきながらぞ頼まるるひとへなるしも身にちかければ
よみ人しらず
刈りて干す淀の真菰の雨ふればつかむもあへぬ恋もするかな
よみ人しらず
水無月の土さへさけて照る日にも我が袖ひめや妹に逢はずして
人麿
鳴神のしばし動きて空くもり雨もふらなん君とまるべく
人麿
人ことは夏野の草のしげくとも君と我としたづさはりなば
よみ人しらず
野も山もしげりあひぬる夏なれど人のつらさは言の葉もなし
よみ人しらず
夏草のしげみに生ふるまろ小菅まろがまろねよ幾夜へぬらん
村上院 御製
山がつのかきほに生ふる撫子に思ひよそへぬ時のまぞなき
清原元輔
思ひしる人に見せばや夜もすがら我が常夏におきゐたる露
よみ人しらず
秋の野の草葉もわけぬわか袖の露けくのみもなりまさるかな
曾禰好忠
わがせこが来まさぬ宵の秋風は来ぬ人よりも恨めしきかな
よみ人しらず
うらやまし朝日にあたる白露を我が身と今はなすよしもがな