人麿
あさねかみ我はけづらじ美しき人の手枕ふれてしものを
藤原実方朝臣
時の間も心はそらになるものをいかで過ぐしし昔なるらむ
よみ人しらず
白波のうちしきりつつこよひさへいかでかひとり寝るとかや君
小弐命婦
いかにして今日をくらさむこゆるぎの急ぎいでてもかひなかりけり
人麿
みなといりの葦わけ小舟さはりおほみ我が思ふ人に逢はぬころかな
人麿
岩代の野中にたてる結び松心もとけず昔おもへば
よみ人しらず
わが宿は播磨潟にもあらなくにあかしもはてて人のゆくらん
よみ人しらず
浪間より見ゆる小舟の浜ひさ木ひさしくなりぬ君に逢はずて
人麿
ますかがみ手にとりもちて朝な朝な見れども君にあく時ぞなき
人麿
みな人のかさにぬふてふ有ますけありての後も逢はんとぞ思ふ
よみ人しらず
いかほ野やいかほの沼のいかにして恋しき人を今ひとめみむ
よみ人しらず
玉河にさらすてつくりさらさらに昔の人の恋ひしきやなぞ
よみ人しらず
身ははやく奈良の都になりにしを恋ひしき事のふりせざるらん
藤原忠房朝臣
いその神ふりにし恋の神さびてたたるに我はねぎぞかねつる
よみ人しらず
いかばかり苦しきものぞ葛木の久米路の橋の中のたえまは
よみ人しらず
限なく思ひながらの橋柱思ひながらに中やたえなん
源頼光
なかなかにいひもはなたで信濃のなる木曽路の橋のかけたるやなぞ
よみ人しらず
杉たてる宿をぞ人は尋ねける心の松はかひなかりけり
よみ人しらず
いその神ふるの社のゆふたすきかけてのみやは恋ひむと思ひし
よみ人しらず
我や憂き人や辛きとちはやふる神てふ神にとひ見てしがな