和歌と俳句

拾遺和歌集

恋四

よみ人しらず
やほがゆく濱の真砂とわが恋といづれまされり沖つ嶋守

兼盛
さしながら人の心をみくまのの浦の浜木綿いくへなるらむ

村上院御製
世の人のおよばぬものは富士の嶺の雲ゐにたかき思ひなりけり

よみ人しらず
わが恋のあらはに見ゆるものならばみやこのふじといはれなましを

よみ人しらず
あしねはふうきは上こそつれなけれ下はえならず思ふ心を

よみ人しらず
ねぬなはの苦しかるらん人よりも我ぞます田のいけるかひなき

人麿
たらちねのおやのかふこのまゆこもりいぶせくもあるか妹にあはずして

よみ人しらず
いさやまだ恋てふことも知らなくにこやそなるらむいこそねられね

よみ人しらず
たらちねのおやのいさめしうたたねは物思ふ時のわざにぞありける

中務
うちとなくなれもしなまし玉すだれたれ年月をへだてそめけん

貫之
うかりけるふしをばすてて白糸の今くる人と思ひなさなん

よみ人しらず
思ふとていとこそ人になれざらめ しかならひてぞ見ねばこひしき

よみ人しらず
た枕のすきまの風も寒かりき身はならはしの物にぞありける

よみ人しらず
吹く風に雲のはたてはとどむともいかが頼まん人の心は

よみ人しらず
わか草にとどめもあへぬ駒よりも なづけわびぬる人の心か

よみ人しらず
逢ふことのかたかひしたるみちのくの駒ほしくのみおもほゆるかな

よみ人しらず
みちのくの安達の原のしらまゆみ心こはくも見ゆる君かな

伊勢
年月の行くらん方もおもほえず秋のはつかに人の見ゆれば

伊勢
思ひきや逢ひ見ぬほどの年月を數ふばかりにならん物とは

伊勢
遥なる程にもかよふ心かな さりとて人のしらぬものゆゑ