和歌と俳句

拾遺和歌集

恋五

よみ人しらず
怨みての のちさへ人の つらからば いかにいひてか ねをもなかまし

閑院大君
きみを猶 怨みつるかな あまのかる もにすむむしの 名を忘れつつ

よみ人しらず
あまのかる もにすむむしの なはきけど ただ我からの つらきなりけり

よみ人しらず
こひわひぬ かなしきことも なぐさめん いづれなかすの はまべなるらん

よみ人しらず
かくばかり うしと思ふに こひしきは 我さへ心 ふたつありけり

人麿
とにかくに 物はおもはず ひたたくみ うつすみなはの ただひとすぢに

村上院御製
いにしへを さらにかけしと 思へども あやしくめにも みつなみだかな

平忠依
逢ふ事は 心にもあらで ほどふとも さやは契りし 忘れはてねど

よみ人しらず
わするるか いささは我も 忘れなん 人にしたがふ 心とならば

よみ人しらず
わすれぬる 君はなかなか つらからで 今まで生ける 身をぞ怨むる

よみ人しらず
我ばかり 我をおもはむ 人もがな さてもやうきと 世をこころみん

よみ人しらず
あやしくも 厭ふにはゆる 心かな いかにしてかは 思ひたゆべき

よみ人しらず
おもふ事 なすこそ神の かたからめ しばしわするる 心つげなん

よみ人しらず
高砂に わがなくこゑは なりにけり 都の人は ききやつぐらん

よみ人しらず
かしまなる つくまの神の つくづくと わが身ひとつに こひをつみつる