和歌と俳句

若山牧水

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雀ゐて あさりをるなり 麦蒔くと 鋤きすてて黒き 冬田の中に

降りすぎし 時雨のあめぞ たまりたる 麦蒔くとして 鋤きすてし田に

見おろせば 霧島山の 山すその 野辺のひろきに なびく朝雲

明方の 月は冴えつつ 霧島の 山の谷間に 霧たちわたる

窓さきに なびき乱るる 枯萱に 降りくるふ雪の うつくしきかな

降りすぎし 今朝のはつ雪 霧島の 老樹の森に 白く積りぬ

はつ雪と いへるこの雪 庭さきの 樹々につもりて 美しきかな

霧島の 山の桧の木に はつ雪の 白くつもりて やがて消えたる

庭先に 積みわたす雪の うへにまよふ いで湯の煙 匂ひたるかも