松葉かく おともこそすれ みそさざい あをじあとりの 啼ける向うに
いつ知らず つきこし犬の わがそばに 添ひてすわれる 枯草の原
あたたかき 沼津の冬や 枯草の あひにくれなゐの なでしこの花
老松の 幹の荒肌に 日ぞさせる 寂びて真しろき 冬の日の色
啼く鳥の 声ぞ澄みたる 木々の葉の よべの時雨の つゆは光りて
かろやかに 駈けぬけゆきて ふりかへり われに見入れる 犬のひとみよ
銃音に みだれたちたる 群鳥の すがたかなしも 老松がうへに
冬の日の み空に雲の 動きゐて 仰げば松の 枝のま黒さ
鶯 さだかにぞ見し 枯草に こもりささなく そのうぐひすを
けふひと日 曇れる冬の 海に浮ぶ 釣舟の数 あきらなるかも
相打てる 浪はてしなき 冬の海の ひたと黒みつ 日の落ちぬれば
ひろびろと 散りみだれたる 櫨紅葉 うつくしきかも まだ褪せなくに
冬寂びし 愛鷹山の うへに聳え 雪ゆたかなる 富士の高山
低くして 手も届きなむ 下枝に 啼きてあそべる 四十雀の鳥
貰ひたる 石油ストーブ 珍しく しみじみ焚きて 椅子にこそをれ
珍しく けふの昼餉は たきたての あつき飯なり 冬菜漬そへて