和歌と俳句

初春 新春

袴着て火ともす庵や花の春 子規

餅花の小判うごかず国の春 子規

民の春同胞三千九百万 子規

餅もすき酒もすきなりけさの春 虚子

父母います人たれたれぞ花の春 子規

淋しさの尊とさまさる神の春 子規

新らしき地図も出来たり国の春 子規

とにかくに坊主をかしや花の春 子規

煩悩は百八減つて今朝の春 漱石

神かけて祈る恋なし宇佐の春 漱石

晶子
わが卓にめでたく白き寒牡丹ひとつ開きて初春はきぬ

晶子
初春の朝わが子等の踏む庭の青木に光るしら玉椿

晶子
初春は恋しき人と歌うたへ遊べと紅き氈の敷きにきぬ

晶子
初春のうら白の葉やかけなまし少し恨みのまじる心に

晶子
うつくしき白馬附けたる車来て出よとさそひぬ春のはじめに

晶子
わが子等が小姓のやうに袴して板の廊下を通ふ初春

晶子
青やかに松立つ街のめでたけれ白馬に乗れる初春の風

何の木か梢そろへけり明の春 水巴