和歌と俳句

拾遺和歌集

大伴坂上郎女
郭公いたくななきそひとりゐていのねられぬにきけはくるしも

中務
夏の夜の心をしれるほととぎすはやもなかなんあけもこそすれ

中務
なつのよは浦島のこがはこなれやはかなくあけてくやしかるらん

よみ人しらず
なつくれば深草山の郭公なくこゑしげくなりまさるなり

実方
さ月やみくらはし山の郭公おぼつかなくもなきわたるかな

よみ人しらず
郭公なくやさ月のみじかよもひとりしぬればあかしかねつも


ほととぎす待つにつけてやともしする人も山べによをあかすらん

貫之
さつきやま木の下闇にともす火は鹿のたちどのしるべなりけり

兼盛
あやしくも鹿のたちどの見えぬかなをぐらの山

に我やきぬらん

躬恒
ゆくすゑはまだとほけれど夏山のこのしたかげぞたちうかりける

貫之
夏山の影をしけみやたまほこの道行く人も立ちとまるらん

恵慶法師
松影のいはゐの水をむすびあげて夏なきとしと思ひけるかな

伊勢
いづこにもさきはすらめどわがやどのやまと撫子たれに見せまし

よみ人しらず
そこきよみながるる河のさやかにもはらふることを神はきかなん

藤原長能
さはべなすあらぶる神もおしなべてけふはなごしの祓なりけり

よみ人しらず
もみぢせばあかくなりなんをぐら山秋まつほどのなにこそありけれ

忠岑
大荒木のもりのした草しげりあひて深くも夏のなりにけるかな