和歌と俳句

後拾遺和歌集

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大納言道綱母
かしは木の杜の下草くれごとに猶たのめとやもるをみるみる

馬内侍
まつ程のすぎのみゆけば大井川たのむる暮もいかがとぞ思ふ

よみ人しらず
浅き瀬をこす筏士の綱よわみ猶この暮もあやうかりけり

高内侍
ひとりぬる人やしるらむ秋の夜を長しとたれか君に告げつる

新左衛門
春霞たちいでむこともおもほえず浅みどりなる空のけしきに

小馬命婦
その色の草ともみえずかれにしをいかにいひてかけふはかくべき

和泉式部
ふしにけりさしも思はば笛竹のおとをぞせまし夜更けたりとも

和泉式部
やすらはでたつにたてうき真木の戸をさしも思はぬ人もありけり

堀川右大臣頼宗
人しらでねたさもねたしむらさきのねずりの衣うはぎにもせむ

返し 和泉式部
ぬれぎぬと人にはいはむ紫のねずりの衣うはぎなりとも

兵衛内侍
秋霧はたち隠せども萩原に鹿ふしけりと今朝みつるかな

左兵衛督公信
朝な朝なおきつつみれば白菊の霜にぞいたくうつろひにける

相模
逢坂の関に心はかよはねど見し東路は猶ぞこひしき

よみ人しらず
ねぬ縄のねぬ名のいたく立ちぬればなほ大澤のいけらしやよに

藤原兼平朝臣母
すむ人のかれ行くやどは時わかず草木も秋の色にぞありける

小一條院
あかつきの鐘のこゑこそきこゆなれこれを入あひと思はましかば

和泉式部
いづくにかきても隠れむ隔てつる心の隈のあらばこそあらめ

和泉式部
やすらひにまきの戸こそはささざらめいかに明けぬる冬の夜ならむ

藤原顕綱朝臣
青柳のいとになき名ぞたちにけるよるくる人は我ならねども

後三條院御製
まだ咲かぬまがきの菊もあるものをいかなる宿にうつろひぬらむ