永源法師
桜花さかばちりなむとおもふよりかねても風のいとはしきかな
中原致時
梅が香を桜の花ににほはせて柳がえだにさかせてしがな
橘元任
明けばまづたづねにゆかむ山櫻こればかりだに人に遅れじ
源雅通朝臣
折らばをし折らではいかが山櫻けふをすぐさず君にみすべき
返し 盛少将
をらでただかたりにかたれ山櫻風にちるだにをしきにほひを
一宮駿河
思ひやる心ばかりはさくら花たづぬる人におくれやはする
右大臣北方
あくがるる心ばかりは山桜たづぬる人にたぐへてぞやる
源兼澄
今こむとちぎりし人のおなじくは花の盛りをすぐさざらなむ
祭主輔親
いづれをかわきてをらまし山桜こころうつらぬえだしなければ
菅原為言
行きとまる所ぞ春はなかりける花に心のあかぬかぎりは
小弁
やまざくら心のままにたづねきてかへさぞ道のほどはしらるる
上東門院中将
にほふらむ花のみやこのこひしくてをるにものうき山ざくらかな
高岳頼言
見るからに花の名だての身なれども心は雲のうへまでそゆく
大貮實政
春ごとに見るとはすれど桜花あかでもとしのつもりぬるかな
能宣
さくら花にほふなごりに大かたの春さへをしくおもほゆるかな
平兼盛
道とほみ行きてはみねどさくら花こころをやりてけふはかへりぬ
能因法師
さくら咲く春はよるだになかりせば夢にもものは思はざらまし
よみ人しらず
うゑおきし人なき宿の桜花にほひばかりぞかはらざりける
和泉式部
みやこ人いかにととはば見せもせむかの山ざくら一枝もがな
和泉式部
人も見ぬ宿に桜をうゑたれば花もてやつす身とぞなりぬる
和泉式部
わかやどの桜はかひもなかりけりあるじからこそ人も見にくれ