陽炎の草に移りし夕べかな 亞浪
汽車道に陽炎たちてゐたりけり 花蓑
陽炎に躍る鰌や鶴の閑 喜舟
陽炎や加茂の堤の古へは 喜舟
陽炎の燃えて野蒜の匂ひかな 喜舟
かげろひて港は夏をおもはしむ 誓子
陽炎や小松も海も満つ光 石鼎
陽炎のもてあそびをるころげ鞠 風生
野祠やかげろふ上る二三尺 蛇笏
墓山のかげろう中に詣でけり 蛇笏
かぎろへばあはれや人は山を越ゆ 悌二郎
かぎろへば山彦よびつ谷ゆける 悌二郎
陽炎や干潟づたひに一里ほど 万太郎
犬放つうしろ姿や野かぎろひ 貞
草木瓜にかげろうたつや埴輪より 蛇笏
かげろふや上古の瓮の音きけば 蛇笏
高土手に立つ陽炎につゝまるゝ 野風呂
木瓜炎ゆと見ればかぎろひ多摩郡 悌二郎
陽炎の消へて枯蘆うたひそむ 悌二郎
そこばくの憂ひをいゆき陽炎に 鷹女
道に出て吾子もともどもかげろへり 鴻村
何もかもむかしとなりてかぎろへる 万太郎
ギヤマンの如く豪華に陽炎へる 茅舎
陽炎の道がつくりときりぎしへ 茅舎
陽炎や手欄こぼれし橋ばかり 犀星
廣庭のただもの遙か陽炎へる 汀女
陽炎にまつはられつつ怠けてをる 風生
あはれ頭に野はかぎろへり皿洗ふ 鷹女
陽炎に人を伴ひゆくはかなし 鷹女
磯続き外川村はかげろへる 梵
陽炎うてゐる丘の肩見つけたり 梵
病快しかげろふ砂を手に握る 誓子
かぎろへる遠き鉄路を子等がこゆ 多佳子
陽炎や道のまなかの大欅 立子
かぎろへる砂丘の窪の炎えさかり 誓子
彳めば曇る眼鏡や陽炎へり 占魚
陽炎を負ひて家なき顔ばかり 楸邨