和歌と俳句

藤原定家

院五十首

ひさかたのあまてる月日のどかなる君がみかげをたのむばかりぞ

あきつしま外まで波はしづかにて昔にかへるやまとことのは

仰げどもこたへぬ空の青みどり空しくはてぬ行く末もがな

わがともともかきの竹もあはれしれ世々までなれぬ色もかはらで

なげかずもあらざりし身のそのかみを羨むばかり沈みぬるかな

身をしれば人をも世をも恨みねど朽ちにし袖の乾く日ぞなき

十とせあまり三とせはすぎぬ夜の霜おきまよふ袖に春をへだてて

わがたのむ心の底をてらし見よみもすそがはにやどる月かげ

春日野やしたもえ侘ぶる思ひぐさ君のめぐみを空に待つかな

くもりなき日吉の神のゆふだすきかくる思のいつかはるべき