たをやめのかふる衣に染めつくす紅葉もしるくきたる冬かな
さだめなき嵐にかはる山かげのくもりも果てぬ入相の鐘
色々に菊ももみぢもうつろへど春のままなるにはのわかまつ
淡く濃き四方のもみぢを吹き分けてかたもさだめぬ木枯の跡
小忌衣しろきをすゑてさかづきのめぐみに酔へる夜半ぞたのしき
かげうつす山の青葉も冬枯れてさびしき池にのこるをしかも
ふり増る吉野のみゆき跡たえてもらぬいはやの音づれもなし
老らくの年のを長き冬のゆめむかしといまと身こそことなれ
おもひづる雪ふる年よ己のみ玉きはるよの憂きに堪へたる
白妙のいろはひとつに身にしめど雪月はなのをりふしはみつ
年くれて松きる賤の身のうへにおひてぞかへる嶺のあらしを
わが友とみしはすくなき年のくれ夢かとだにも誰にかたらむ