和歌と俳句

藤原定家

韻字四季歌

たをやめのかふる衣に染めつくす紅葉もしるくきたる冬かな

さだめなき嵐にかはる山かげのくもりも果てぬ入相の鐘

色々に菊ももみぢもうつろへど春のままなるにはのわかまつ

淡く濃き四方のもみぢを吹き分けてかたもさだめぬ木枯の跡

小忌衣しろきをすゑてさかづきのめぐみに酔へる夜半ぞたのしき

かげうつす山の青葉も冬枯れてさびしき池にのこるをしかも

ふり増る吉野のみゆき跡たえてもらぬいはやの音づれもなし

老らくの年のを長き冬のゆめむかしといまと身こそことなれ

おもひづる雪ふる年よ己のみ玉きはるよの憂きに堪へたる

白妙のいろはひとつに身にしめど雪月はなのをりふしはみつ

年くれて松きる賤の身のうへにおひてぞかへる嶺のあらしを

わが友とみしはすくなき年のくれ夢かとだにも誰にかたらむ