ほのめかす とはたの稲葉 うちなびき 露にかげある ゆふづくよかな
それもみな 出づべきほどの あるものを 待つ心や いざよひの月
知るばかり 待つには暮れぬ 空ながら 出づれば更くる 秋の夜の月
晴れやらで 山の端たかく なりにけり 雲より出づる 秋の夜の月
ながむれば ふけゆくままに 雲はれて 月すみはつる 秋風の空
あはれにも 袂にやどる ひかりかな 月やなさけを おもひ知るらむ
おもかけを なにに忘れむ 秋のすゑ ながめなれたる 有明の月
おもふこと これぞたがはぬ 秋の月 われゆゑ晴るる 空ならねども
むねのうちに たのみもふかき 月よりも まづ心すむ 秋の夜の空
とやまより こころにふかき うすもみぢ しくれのおくの おもひやられて
かはりゆく 裾野の萩の した葉より こずゑにつづく 秋の色かな
よそにだに 見てやは過ぎし ははそはら きりのうちまで おもひいるらむ
あきやまの 色をこころに 染めかへて ながめすててき 峰の白雲
のこるべき 秋のかたみの ためなれや まだ青葉なる 枝のひとむら
おもへども 色はみやこに 遠けれは 安達の真弓 音にのみこそ
散りつもる ことをかねてや 谷川の かけよりうつす みねのもみぢ葉
あはれさて これはかぎりの 色なれや 秋もすゑはの はしのむらたち
おもふより かねてかつ散る ながめかな たつたのやまの 秋風の色