さだめなき時雨の雲の絶え間かなさてや紅葉のうすくこからむ
冬来ては野邊のかりねの草枕くるれば霜やまづむすぶらむ
旅寝する夢路はたえぬ須磨の関かよふ千鳥のあかつきのこゑ
ふりしきし木の葉の庭にいつなれて霰まちとる音をつぐらむ
日かげ草くもりなき世のためしとや豊のあかりにかざし初めけむ
神垣や霜おくままにうちしめり月影やどる山あゐのそで
ふる雪にさてもとまらぬみかり野を花の衣のまづかへるらむ
つもりける雪の深さもしらざりつまきの戸あくるあけぼのの空
をちかたやはるけき道に雪つもり待つ夜かさなる宇治の橋姫
年の内にはかなくかはる事もみな暮れぬるけふぞ驚かれぬる
わが恋よきみにもはてはしのびけり何をはじめて思ひ初めけむ
みをつくし忍ぶ涙のみごもりにこの世をかくて朽ちや果てなむ
いかなるむふしにさぞとも知らせましまだ音もたてぬ夜半の笛竹
ことづてむ人の心もあやふさにむみだにも見ぬあさむつの橋
袖の上にさもせきかへす涙かな人の名をさへくたしはてじと
おりたちてかげをも見ばやわたりがは沈まむ底の同じ深さを
願はれむその錦木はさもあらばあれ君がためてふ名をし立てずば
あしがきの人目ひまなきまぢかさを分けてつたふる幻もがな
乱れじとかくてたへけむ玉の緒よ長き恨みのいつかさむべき
こひわびぬ心のおくのしのぶ山つゆも時雨も色に見せじと