石ばしる瀧あるはなのちぎりにてさそはばつらし春の山風
わくらばに通ふ心のかひもあらじ頼む吉野のかざしばかりは
音に立つるかけのたれ尾の誰ゆえか乱れてものは思ひ初めてし
秋の野にをばなかりふく宿よりも袖ほしわぶるけさの朝露
下紐のゆふ手もたゆきかひもなし忘るる草をきみやつけけむ
あけぬとけゆふつけどりの聲すなり誰か別れの袖濡らすらむ
ながめする今日も入相の鐘の音に過ぎ行く方を身に數へつつ
山里はなほ淋しとぞたちかへるあくれば急ぐ心やすまで
よそにのみみ山の杉のつれもなくもとの心はあらずなりつつ
それもうとし心なぐさむ海山は身のよるべとも思ひならはで
心からいきうしといひて帰るともいさめぬ関を出でぞ煩らふ
かきやれば煙たちそふもしほぐさあまのすさみに都こひつつ
浪まくら濱風しろくやどるつき袖のわかれのかたみがほなる
人もわかず山路しぐれて行く雲をともなふ嶺の袖のしづくは
玉ほこやたび行くひとはなべて見よ国さかへたる秋津しまかな
君が代の雨のうるひはひろけれど我ぞめぐみの身にあまりぬる
いかにして朽ちにし谷の木のもとに道ある御代の春をまちけむ
むらさきの色こきまでは知らざりき御代のはじめの天の羽衣
わかの浦に鳴きてふりにし霜の鶴このごろ見えつ心やすめて
祈りおきしわがhるさとの三笠山きみのしるべを猶思ふかな