貫之
あしひきの山かきくもりしぐるれど紅葉はいとどてりまさりけり
よみ人しらず
綱代木にかけつつ洗ふ唐錦日をへてよする紅葉なりけり
貫之
かきくらししぐるる空をながめつつ思ひこそやれ神なびのもり
よみ人しらず
かみなづき時雨しぬらしくすのはのうちこかるねに鹿もなくなり
僧正遍昭
唐錦枝にひとむらのこれるは秋のかたみをたたぬなりけり
貫之
流れくるもみち葉見ればからにしき滝のいともておれるなりけり
兼盛
時雨ゆゑかづくたもとをよそ人はもみぢをはらふ袖かとや見ん
重之
あしのはにかくれてすみし津の国のこやもあらはに冬はきにけり
よみ人しらず
ひねもすに見れどもあかぬもみぢ葉はいかなる山の嵐なるらん
よみ人しらず
夜をさむみねざめてきけば鴛鴦のうらやましくもみなるなるかな
よみ人しらず
水鳥のしたやすからぬ思ひにはあたりの水もこほらざりけり
よみ人しらず
夜をさむみねざめてきけばをしぞなく払ひもあへず霜やおくらん
よみ人しらず
霜のうへにふるはつゆきのあさ氷とけずも物を思ふころかな
右衛門督公任
霜おかぬ袖だにさゆる冬の夜に鴨のうはけを思ひこそやれ
たちはなのゆきより
池水や氷とくらむあしかもの夜ふかくこゑのさわぐなるかな
よみ人しらず
水のうへに思ひしものを冬の夜の氷は袖の物にぞありける