和歌と俳句

藤原雅経

後鳥羽院第二度百首

ももしきや 絶えぬ流れを みかは水 なほゆくすゑの かげもはるけし

かはたけの かはらぬ色の ふかみどり たましく庭の すゑぞしらるる

をさまれる よのためしとや かきとめし 風も音せぬ 荒海のなみ

雲かかる 大内山と なりにけり いくよの塵の つもりなるらむ

ゑしの焚く けぶりたえせぬ 御代にあひて 民のかまども いかがうれしき

すみれつむ 袖より袖を かたしきて 野をなつかしみ ひとよのみかは

ここやさは たなばたつめに やどかりし あまのかはらの ゆふぐれの空

もみぢ葉を 袖にこきいれ かへりけむ 人のこころの 色を見るかな

みかりせし 野守のかがみ たづね来て ふりにしかげも 見るここちする

しほがまの いつかきにけむ とばかりの その言の葉に むかしをぞ知る

春のあした はこやのやまの みぎりより 松いはひ立つ 雲の上人

けふにあふ くもゐの庭の すまひ草 とる手もあだたに うつるものかは

これもまた ちとせの秋の ためしかな けふことにひく 望月の駒

君が代に 雲のかよひぢ 空はれて をとめのすがた 月に見るかな

あらたまの 春をむかふる 年の内に 鬼こもれりと やらふこゑごゑ

雲の上も 春のみやまの よろづ代も 松と竹との すゑにたとへて

いつとなく きみが齢は 和歌の浦に ちとせをさして たづ鳴きわたる

君が代を おもふこころの すゑの松 波は越すとも 色はかはらじ

いくちよも おなし月日の めぐり来て かはらぬ御代は 空にしるしも

ももくさの ちぐさにあまる 言の葉も 君がみかげは すゑぞさかへむ