和歌と俳句

源頼政

雲の上に 別れ鶴は おりゐても ひとかたならぬ ねをや鳴くらむ

別れにし くもゐをこふる 葦鶴は 沢辺にひとり ねをのみぞ鳴く

げにもさぞ ありて別れし ときだにも 今はと思へば かなしかりしを

あるをだに さこそは人は 思ひつれ なきはあはれを そこと知らずや

かなしさを 嘆く心の あらばこそ とふもとはぬも 思ひわかれめ

よそながら 嘆く心の 失せぬにぞ 君が思ひに 劣るとは知る

限りあれば 月は今宵も 出でにけり きのふ見し人 けふはなき世に

この世には 言葉も文も かき絶えて 金につてある ことぞかなしき

よそにのみ かくききききて いつかまた はかなき跡を 人に訪はれむ