きのふかも 年は暮れしか あまのとの あくる待ちける 春霞かな
こほり解く おきつ春風 吹きぬらし 汀にかへる 志賀のうらなみ
はれやらぬ くもは雪解の 春風に 霞あまきる みよしのの空
若菜つむ ゆかりに見れば むさしのの 草はみながら 春雨の空
雪さむき やまの軒端の 梅が枝に 春を待ちしも うぐひすのこゑ
春も来て たちよるばかり ありしより 霞の袖の 梅のうつり香
かすむより くもぢにのみぞ こゑはする 沢辺のたづも 野辺のひばりも
白雲の たえまになびく 青柳の かつらぎやまに 春風ぞ吹く
たちかへり みてもみまくの 花ざかり さそはぬ風の うちにほひつつ
やまたかみ くもゐの桜 雲とみて やすらふほどに 風や吹くらむ
たにかぜや やまもかすみの ひまごとに またうちいづる 花の白波
やまかぜの 吹きぬるからに 音羽川 せきいれぬ花も 滝の白波
くもも憂し あらしもつらし やまざくら まがふと見れば 散りはてにけり
春のうちは 待つも惜しむも おもひねの 花をのみ見る ころの夢かな
忘れずば 散りなむのちも おもひいでよ 花見がてらの 春の夜の月
みよしのや たのむの雁の こゑすなり 花になごりの 春のあけぼの
里とほみ 生野のすゑを 見渡せば 霞にかへす 春のをやまだ
暮れぬとも いかが見捨てて たちばなの たづねこし間の 山吹の花
うつりゆく 春をば田子の うらみても わすれずかけよ 岸の藤波
かぎりあれば こよひもすでに 更けにけり 暮れがたかりし 春の日數の