和歌と俳句

良寛

さよ更けて風や霰の音聞けば昔恋しうものや思はる

さよ更けて風や霰の音すなり今やみ神の出で立たすらし

草の庵にねざめて聞けばひさがたの霰とばしるくれ竹の上に

夜もすがら草の庵に我れおれば杉の葉しぬぎ降るなり

今よりはふる里人の音もあらじ峰にも尾にも積る白雪

おしなべて山にも野にも雪ふりぬ消えざるをりは粉に似てあるべし

さよ更けて高根のみ雪つもるらし岩間のたきつ音だにもなし

埋み火やややしたしくぞなりにけるをちの山べに雪やふるらん

軒も庭も降り埋めける雪のうちにいや珍しき人の音づれ

山かげのまきの板屋に音はせねど雪のふる夜は寒くこそあれ

山かげのまきの板屋は音はせねど雪の降る日は空にしるけり

み雪ふる片山かげの夕暮は心さへにぞ消えぬべらなり

我が宿の浅茅おしなみふる雪の消なばけぬべき我が思かな

冬がれのすすき尾花をしるべにてとめて来にけりこれの庵に

ひさがたの雪野に立てる白鷺はおのが姿に身をかくしつつ

柴の戸の冬の夕べのさびしさをうき世の人にいかでかたらん

ひさがたの天きる雪のふる日には杉の下庵思ひやれ君

くつなくて里へも出でずなりにけりおぼしめしませ山住の身を

木の葉のみ散りに散りしく宿なれば叉来ん折は心せよ君

白雪の日毎に降れば我が宿はたづぬる人のあとさへぞなき

我が宿は越のしら山冬ごもり行き来の人のあとかたもなし

我がいほは國上山もと冬ごもり行き来の人のあとさへぞなき

わが宿はこしの山もと冬ごもり氷りも雪も雲のかかりて