和歌と俳句

良寛

今よりはつぎて白雪つもらまし道ふみわけて誰れか訪ふべき

ひさがたの雪ふみわけて来ませ君柴の庵に一夜かたらん

み山びに冬ごもりする老の身を誰れか訪はまし君ならずして

雪の夜に寝ざめて聞けば雁がねも天つみ空をなづみつつ行く

友呼ばふ門田の雁の聲きけばひとりや淋し物や思はる

あしびきの山田の田ゐに鳴くの聲きく時ぞ冬は来にける

風まぜに雪は降りけりいづくより我がかへるさの道もなきまで

小夜更けて門田のくろになく鴨の羽がひの上に霜やおくらん

日はくれて浜辺を行けば千鳥なくどうとは知らず心細さよ

夜を寒み門田のくろに居る鴨のいねがてにする頃にぞありける

冬ながらよの春よりもしづけきは雪にうもれし越のやまざと

冬の空結ぶ柳のいとながく千とせの春に逢ふを待たばや

世の中にかかはらぬ身と思へども暮るるは惜しきものにぞありける

村ぎもの心かなしもあらたまの今年の今日も暮れぬと思へば

いと早き月日なりけりいと早く年は暮れけり我れ老いにけり

今よりはいくつぬればか春は来ん月日よみつつまたぬ日はなし

をしめどもとしは限りとなりにけり吾が思ふことのいつか果てなん

今朝はしもおし来る水のこほれるにこの里人も漕ぎぞわづらふ

この里は鴨つく島か冬されば往き来の道も舟ならずして

いかにせん窪地の里の冬さればを舟もゆかず橇もゆかねば

むらぎもの心をやらん方もなしいづこの里も水のさやぎに