草も木もひとつに落つる霜のうちに葉がへぬ松の色ぞ残れる
いそのかみふるの神杉ふりぬとも常磐かきはの影はかはらじ
まきもくの檜原のしげみかき分けて昔のあとを尋ねてぞ見る
けふ見れば弓きるほどになりにけり植ゑし岡べの槻のかた枝
旅まくら椎の下葉ををりかけて袖も庵もひとつ夕露
月もいさ槙の葉ふかき山のかげ雨ぞつたふるしづくをもみし
夕まぐれ風吹きすさぶ桐の葉にそよ今更の秋にはあらねど
しぐれ行くはじの立枝に風こえてこころ色づく秋の山里
こずゑより冬の山風はらふらしもとつ葉残るならの葉がしは
しのぶ山こまちの奥にかふ鷲のその羽ばかりや人にしらるる
梓弓すゑの原野にひきすゑてとかへる鷹をけふぞあはする
風立ちて澤邊にかけるはやぶさの早くも秋のけしきなるかな
枯野やく烟のしたに立つきぎす咽ぶおもひやなほ増るらむ
夕立の雲間の日影はれそめてやまのこなたをわたる白鷺
鳴子ひく田のもの風になびきつつなみよる暮れのむら雀かな
さらぬだに霜枯れ果つる草の葉をまづうち払ふにはたたきかな
人とはぬ冬の山路の淋しさよ垣根のそばにしとどおりゐて
つばくらめあはれに見へるためしかな変はる契りは習なる世に