和歌と俳句

源頼政

しめのうちに よをとほすかな した消えぬ かしらの雪を うち払ひつつ

舟わたす すみだ川原に 降る雪の 色にまがへる みやこ鳥かな

越のそら ゆきげの雲の 絶えせねば 降らぬ日をのみ かぞへつるかな

今朝みれば をのやま白し うべぞこの 過ぎぬる夜半の 床は冴えける

雪つもる 越の山風 吹きぬらし ひはら松の葉 あらはれて見ゆ

雪ふれば 何に髪をば 隠すべき かるもが下の 居所もなし

しのび妻 かへらむあとも しるからじ 降らばなほ降れ しののめの雪

山里の 雪をひとりは みまうきに 君や来まさむ 我や行くべき

君ませと いははかしこし 降る雪を うち払ひつつ 我ぞ行くべき

われかみや ふるかは水の うす氷 むかしは清き 流れなれども

冴ゆる夜は つららやまなき はらの池の うへ飛ぶ鴨の やがて過ぎぬる

朝まだき 雪ふみわけて 出でて我が また来むあとを 見むや見しとや

雪のうちに また来むあとを 待つものを 見せじといはば 消ゆばかりなり

かぞふれば わが身も年も 暮れはてて ふるもかしらの 雪かとぞ思ふ