和歌と俳句

燕 乙鳥

風きつてあした峡閧フ初つばめ 蛇笏

燕飛び水勢霞む熊野川 秋櫻子

燕飛ぶ風やオリーブの雨こぼれ 秋櫻子

新燕に脳天と鍬今年も光る 三鬼

むらさきの飛燕の捌人通り 不死男

つばめ来てつばさに雨の見えて舞ふ 爽雨

燕来て小田の光りにまぎれ下り 爽雨

羽を浸すばかりに水うち初つばめ 爽雨

雙燕のもつれたかみて槻の風 蛇笏

燕とぶ二萬五千の霊ここに 万太郎

黒雲から黒鮮かに初燕 草田男

尾を垂れてオランダ塀に鳴く燕 秋櫻子

燕来ぬ文字ちらし書く爪哇更紗 秋櫻子

若布刈舟出でて飛燕の土佐泊 秋櫻子

燕来し簷や浄瑠璃人形師 秋櫻子

旅行く日高嶺燕のむらがりを 青畝

奥木曽の屋根石にをり初燕 秋櫻子

一匙一匙コーヒー飲む吾子間町燕 草田男

身一つふかく裂けつつ一飛燕 草田男

燕きて天心ことに利鎌の羽 爽雨

吹降りにさからふ飛燕最上川 青畝

燕二羽翔けて天日まどかなり 秋櫻子

こころにも影落しゆくつばくらめ 不死男

鍋墨の顔ひそめけり燕くる 静塔

床ずれや天に寝返るつばくらめ 不死男

泥運ぶ燕の見えて姥が餅 林火

十二階に来てつばくろの真かがやき 林火