和歌と俳句

燕 乙鳥

燕のしば鳴き飛ぶや大堰川 虚子

燕とびかふ旅から旅へ草鞋を穿く 山頭火

ひらり高う嫩葉食みしか乙鳥 水巴

陽の碧くむら嶺の風に燕来ぬ 蛇笏

窓の空を過ぐ燕のけふもあり 石鼎

町空のつばくらめのみ新しや 草田男

燕の高くとびかひ大堰川 立子

燕や朱ケの楼門くだつまま 鳳作

旅を来し激戦のあと燕とび 多佳子

燕のさへずり宙にこぼれけり 茅舎

夜あらしのしづまる雲に飛燕みゆ 蛇笏

夜の明けし草木と我に飛燕かな みどり女

目あけ臥る公園の空燕のみ 草田男

飛燕高し物干台に狆動く 草田男

燕来と工房の玻璃みな澄みぬ 槐太

燕やヨットクラブの窓の外 虚子

飛燕にも心ありとも思はるる 虚子

乱れ飛ぶ飛燕かなしと見やりけり 虚子

枯桑につばめしきりに光りけり 万太郎

暁けて来るくらさ愉しく燕とゐる 多佳子

雪白きしなのの山山燕来る 多佳子

ひるがへることなく一羽初つばめ 

つばくらやまだ冷ゆる日のある今年 

バスを待つ隠岐の巡査につばくらめ 楸邨

ひとは征きわれ隠岐にありつばくらめ 楸邨

つばめつばめ泥が好きなる燕かな 綾子

ぬかるみに下りたるつばめ瀟洒たり 蛇笏

喋りては濡れ羽をのしてつばくらめ 蛇笏

燕の尾さきさばける下通る 誓子

燕来ぬ山家の障子真白に 多佳子

もの種を買ひぬ燕ひるがへり 素十

燕のゆきちがひたる啼きにけり 夜半

勇気こそ欲し今日以後を飛ぶ燕 不死男

店頭の鍬の柄素し燕来ぬ 草田男

燕を見てをり旅に出て見たく 立子

雨はれて山家の燕畦にをり 秋櫻子

沼の香のただよひそめて燕来る 蕪城

つばめきて青空たかき軒端かな 占魚

窓あけて織る日となりぬ燕来る 占魚

つばくらに水のやうなる朝来たる 占魚

山みつゝ燕に眼うつしたり 占魚

焦土日々いつ燕を見るあらむ 楸邨

火山湖のみどりにあそぶ初つばめ 蛇笏

国道のつばくろに子がにこにこと 誓子

わが彳てば遠くは出でず燕 誓子

翔ち出づる燕やけふもこの家訪ふ 誓子

ゆふぐれの燕の為のとぼそにて 誓子

いつやらもこの日のごとく燕とぶ 占魚