和歌と俳句

行く年

ゆく年やむざと剥ぎたる烏賊の皮 万太郎

ゆく年やしめきりてきく風の音 万太郎

ゆく年や風の落ちたる伊豆の空 万太郎

ゆく年や蕎麦にかけたる海苔の艶 万太郎

百万の焼けて年逝く小名木川 波郷

ゆく年の火いきいきと子を照らす 龍太

ゆく年やこゝは越後の糸魚川 万太郎

行く年やヨルダン受洗主あやに若し 草田男

ゆく年の蘆間がくれの滑川 万太郎

ゆく年の旅の一事に納骨も 爽雨

行く年の没り日も月もまるかつし 爽雨

ゆく年の水にうつる灯ばかりかな 万太郎

ゆく年やあはれ霜除敷松葉 万太郎

行年の障子昃りぬ貨車煙 波郷

ゆく年やしきりに岸へいどむ波 万太郎

ゆく年や狐のかけしよだれかけ 万太郎

ゆく年や海すこしみえ瑞泉寺 万太郎

ゆく年の不二みよと也瑞泉寺 万太郎

低く赤く年逝く日あり馬入川 波郷

行く年のにただよふ荒筵 不死男

行く年や枕辺に持す酸素罎 波郷

年は逝く平穏死後にありあらじ 悌二郎