たまづさを うれしうれしと まき持てば みな偽りの 言の葉はかさは
恋ひわたる なかにしもなと 名にもおはぬ あふくま川の 流れそめけむ
逢ひもみば のびむ命を やがてさは そのひとよには いかがこふべき
憂しやわれ よひよひごとの あらましを 思ひ出でにして よを過ぐしつつ
命をば 逢ふにかへむと 待つものを なほいたつらに さきだちねとや
わが恋は 今を限りと 夕まぐれ 荻吹く風の おとづれてゆく
新古今集・恋
わが恋は 今をかぎりと ゆふまぐれ 萩咲く風の 音づれて行く
憂かりつる 夢をちかへて 頼むかな 逢ふとみるよも まさしからねば
今宵さは うれしかりつる 袖にまた もとの涙を なほつつめとや
なにとこは 荻の夕風 さてもあらで わが恋をさへ おどろかすらむ
逢ふとみる 夢の覚むるは かへるにて またそのくれに ゆかばこそあらめ
消ぬが上に ともまつ雪は まちつけて 逢はで年ふる 身をいかにせむ
たのめおきし よはと思ひて くれはとり 何にあやかる 心なるらむ
おのづから しばしつれなき 君なるを 知らではかなく 恋ひや死ぬべき
思ふにも よらぬ命を しばしとて あはれつれなき 君にやあるらむ
恋ひ死ぬと さは言はじとて これをなほ 生けるにはまた すべきものかは
をみなへし たてるあたりは よきて行かむ 道ゆきずりは 袖濡らしけり
なほざりの 心や君に 先立ちて 道を通さぬ 関となりけむ
ひとづてに たえずもりこし みづくきの あとさへなどや うちもまかせぬ
今宵さへ なほ稲舟の いかにこは い杭に竿の さはりがちなる
とりのあとを われはつつむと いふならば 誰が言の葉も ふみな散らしそ