考へて笑へば近し庭菫 知世子
菫濃し汀線を距るいくばくぞ 誓子
菫束ぬ寄りあひ易き花にして 草田男
菫野に来て老い恥をさらしける 鷹女
菫咲く地の一角を鬼門とし 鷹女
青年と腹這ふ前に菫濃し 誓子
わらづかのかげにみつけしすみれかな 万太郎
すみれ踏みしなやかに行く牛の足 不死男
花菫たばね色増す伊豆近し 林火
荒磯辺の家の石垣菫咲き たかし
朝鳥や菫繞らす切株に 波郷
すみれ風一段高くボートの池 三鬼
すみれ揺れ大鋸の急がぬ音 三鬼
餅撒かれ菫踏まねばならぬかな 青畝
古代墳墓暗し古代のすみれ揺れ 三鬼
青沼となる青い野の青すみれ 鷹女
狗犬が踏むみちのくの菫草 青畝
菫老いて同族の紺見当たらぬ 耕衣
野の菫大和の塔の庇にも 青畝
偕老や雨を光らす崖すみれ 不死男
師のかげに夫人は菫そと賜ふ 波郷
老師来ませしよりの日数よ菫籠 波郷
眼をとむる神体山の花菫 誓子
ひた歩む老婆びつしり白すみれ 鷹女
父と母の記憶のほかの壺すみれ 汀女
強風の埼花菫静まれず 誓子