たれか世を おもひとりべの 山の端に 立つやはよその けぶりならねど
世のならひ はかなきものぞ とばかりを いふもあだなる 言の葉の露
おどろかぬ こころひとつの まよひきて なほ夢ふかし あな憂よのなか
いたづらに むなしき空を ながめても よは浮雲の うちしぐれつつ
人となる ことこそ難き 世なれども あはれいくたび 生れ来ぬらむ
ありとても さてや果つると 生けるもの かならず死ぬる 世とはしるしる
かぎりあれば いつのちぎりを むすぶらむ しらぬの山の 苔のしたつゆ
さきのよも いかなる罪の おもき上に かさねて積もる 月日なるらむ
いつまでか のどかに世をも おもひけむ 憂しとみそぢの あまりはかなき
人のよはひ これよりすゑぞ あはれなる さりゆくさまの 思ひ知られて
ふかく染むる こころの色の あらはれて うきよはれゆく むらさきの雲
初花と 咲くもほどなき はちす葉の にごりにしまぬ 色や見ゆらむ
おしなべて ゆききのさとり 見つる身は かよふこころに 身をまかせつつ
これぞこの こころにかけし しらくもの さかひはるかに うきよへだてて
おもふこと ゆたのたゆたに つつむ袖 たちゐにつけて 身にあまるまで
あだにのみ なほうたかたの 消えぬとも むすべば深き 江にこそありけれ
つひにまた のりのむしろを しきしまや やまと言の葉 かはすもろ人
ほとけを見 のりを聞くこそ うれしけれ ねがひしままの こころ違はで
あさゆふの なるるたぶさに ささへても こころのままに 花たてまつる