あら玉の年をいのるとひく駒のあとも久しききさらぎのそら
水無月の月かげ白き小忌衣うたふさざなみよるぞ涼しき
みてぐらの立つやいすずの河波に山のもみぢも幣やたむくる
かざし来し櫻も藤もむかしにて御手洗川をおもひこそやれ
なれそめし雲の上こそ忘られね彌生の月のふるきかたみに
玉川に月のしがらみかけてけりいるかげみせぬ卯の花のころ
人もみな情けあるべき世とぞみるまた秋の夜に月も澄むめり
天の川夜わたる月もこほるらむ霜にしもおくかささぎのはし
梅の花にほふ春邊と吹く風にたが垣根とかあすもたづねむ
かげ茂みむすばぬさきの山の井に夏なき年とまつかぜぞ吹く
里ごとに人なすすめそ秋のかぜ来ぬ夜うらみよ憂き身なげけと
冬の夜の霜もたまらず吹く風にほしのひかりぞまさり顔なる
あさみどり露の玉の緒ぬきもあへずやなぎの糸に春雨ぞ降る
水もなきこさかを落つる夕立のたきつせうくるもとのたに川
軒の雨の空しきはしをうつたへに寝られぬ夜半の秋ぞつれなき
さえくらす都は雪もまじらねど山の端しろきゆふぐれのあめ
里とほき八聲の鳥の初こゑに花の香おくる春のやまかぜ
色はまだわかれぬ軒のあやめぐさ五月となれるあけくれの空
たが里のいづらは秋の鐘の音を月よりのちも眺めてぞ聞く
旅人のゆくかたとほくいでぬなりまだ夜は深き雪のけしきを